1. インターホンが鳴る恐怖――知らない相手への不安
一人で家にいる時、突然インターホンが鳴る。
画面には、見覚えのない男性。
スーツを着て、何かの書類を持っている。
「どなたですか?」と聞くと、
「○○電力です」「市役所から来ました」「大切なお知らせがあります」――
そう言われると、何となく開けなければいけない気がしてしまう。
でも、本当にそうでしょうか?
本当に、その人は「開けなければいけない相手」なのでしょうか?
私がこの記事を書いているのは、この「何となく開けてしまう不安」を、
皆さんと一緒に考えたいからです。
詐欺や訪問販売の被害は、「ドアを開けた瞬間」から始まります。
そして、その被害は、単にお金を失うだけでなく、
「騙された」という悔しさ、「家族に言えない」という孤独、
「もう誰も信じられない」という絶望を生み出してしまうのです。
2. 統計の裏にある、被害者たちの後悔
警察庁の統計によれば、令和4年の特殊詐欺被害額は約370億円。
被害件数は約1万7千件。
この数字の裏には、1万7千人以上の「後悔」があるのです。
「あの時、ドアを開けなければ」
「あの時、電話を切っていれば」
「あの時、家族に相談していれば」
被害者の多くは、こう語ります。
「まさか自分が騙されるとは思わなかった」と。
そして、被害者の約7割が65歳以上の高齢者です。
なぜ、高齢者が狙われるのか?
それは、高齢者が「断りにくい」「優しい」「話を聞いてくれる」から――
つまり、犯罪者は「人の良さ」を悪用しているのです。
あなたの優しさは、決して悪いものではありません。
でも、その優しさが、犯罪者に狙われている。
だから、私たちは「優しさを守るために、冷酷になる勇気」を持たなければならないのです。
3. 詐欺・訪問販売の手口――巧妙化する犯罪
詐欺の手口は、年々巧妙化しています。
オレオレ詐欺(振り込め詐欺)
「お母さん、俺だよ。会社のお金を使い込んでしまって、今日中に返さないとクビになる」
息子や孫を装った電話。声は似ているように聞こえる。焦っている様子が伝わってくる。
親としては、助けてあげたいと思ってしまう。
還付金詐欺
「市役所です。医療費の還付金があります。ATMで手続きをお願いします」
公的機関を装った電話。「還付金」という言葉で安心させる。
ATMに誘導し、実際には振り込みをさせる。
訪問販売詐欺
「屋根が壊れています。このままだと雨漏りします。今日契約すれば安くなります」
「消火器の点検が義務です。交換が必要です」
不安を煽り、その場で契約を迫る。高額な契約をさせる。
キャッシュカード詐欺盗
「銀行協会です。あなたのカードが不正利用されています。今から職員が回収に行きます」
偽の職員が訪問し、キャッシュカードを騙し取る。暗証番号も聞き出す。
これらの手口に共通するのは、
「焦らせる」「不安を煽る」「その場で決めさせる」「家族に相談させない」――
こうした心理操作なのです。
4. 3つの実例――被害者たちの証言
【事例T】オレオレ詐欺で300万円を失った――Tさん(78歳・女性)の証言
「息子から電話がかかってきたんです。
『お母さん、大変なことになった。会社の金を使い込んでしまって、今日中に返さないとクビになる』と。
声は、確かに息子のように聞こえました。
いや、今思えば、ちょっと風邪気味のような声だったかもしれません。
でも、その時は、息子が困っていると思って――。
『300万円、今日中に振り込んでほしい』と言われて、
私は銀行に行きました。
窓口の方が『大金ですが、何に使われるんですか?』と聞いてくれたんですが、
私は『息子のことだから』と言ってしまって――。
振り込んだ後、念のため息子の携帯に電話したら、
『母さん? 何? 俺は何も連絡してないよ』と言われて――。
その瞬間、全身の血が凍りつきました。
騙されたんだ、と。
300万円は、父が残してくれた大切なお金でした。
息子には、今でも言えていません。
自分が情けなくて、恥ずかしくて――」
【事例U】訪問販売で200万円の契約を――Uさん(72歳・男性)の証言
「ある日、インターホンが鳴りました。
『屋根の無料点検をしています』と言われて、
無料ならいいかと思って、屋根を見てもらったんです。
そしたら、『ここが壊れている。このままだと雨漏りで家がダメになる』と言われて、
写真を見せられました。
私は屋根のことはよくわからないから、
『そうなんですか』と言ったら、
『今日契約すれば、200万円のところを150万円にします』
『でも今日だけです。明日だと通常料金になります』と――。
焦ってしまって、契約書にサインしてしまいました。
後で息子に話したら、『それは詐欺だ!』と言われて、
クーリングオフで解約できたんですが――
あの時の自分が、本当に情けないです。
なんで、その場で家族に相談しなかったのか――」
【事例V】還付金詐欺で80万円を――Vさん(81歳・女性)の証言
「市役所から電話がかかってきました。
『医療費の還付金が8万円あります。ATMで手続きをお願いします』と。
還付金? 8万円?
そんなにあるのかと思いましたが、市役所と言われたので――。
電話の指示通り、ATMに行きました。
『この番号を押してください』『この金額を入力してください』と言われるまま操作して――。
でも、画面には『振込』と表示されていて、
『これ、振込になってますけど?』と聞いたら、
『還付の手続きです。そのまま進めてください』と言われて――。
結局、80万円を振り込んでしまいました。
ATMから帰ってきて、通帳を記帳したら、80万円が引き落とされていて――
騙されたんだと気づきました。
還付金が8万円のはずが、80万円も取られて――
私の老後の生活費が、一瞬で消えてしまいました」
5. 詐欺を見抜く方法――怪しいサインの見分け方
詐欺を見抜くには、「怪しいサイン」を知ることが重要です。
電話での怪しいサイン
- • 「息子」「孫」と名乗るが、名前を言わない
- • 声が違うのに「風邪を引いている」と言う
- • 「今日中に」「今すぐ」と焦らせる
- • 「誰にも言わないで」と口止めする
- • ATM操作を電話で指示してくる
- • 「還付金」と言ってATMに誘導する
訪問販売での怪しいサイン
- • アポなしで突然訪問してくる
- • 「無料点検」と言いながら契約を迫る
- • 「今日だけ」「今すぐ」と焦らせる
- • 不安を煽る(「壊れている」「危険」)
- • 契約書を急いで書かせようとする
- • 身分証明書を見せない、または偽造
詐欺師の共通点
- • とにかく「焦らせる」
- • 家族に相談させない
- • その場で決めさせようとする
- • 公的機関や有名企業を装う
- • 不安や恐怖を利用する
これらのサインが一つでもあれば、「詐欺かもしれない」と疑ってください。
疑うことは、決して失礼ではありません。
あなたの財産と安全を守るために、絶対に必要なことなのです。
6. 訪問販売への対応方法――断り方と撃退法
訪問販売への最も効果的な対策は、「ドアを開けない」ことです。
基本の対応
- インターホン越しに対応する(ドアは開けない)
- 「結構です」「必要ありません」とはっきり断る
- 「家族に相談します」と言って断る
- しつこい場合は「警察を呼びます」と言う
断り方の例
- ✓ 「結構です。お帰りください」
- ✓ 「家族に相談しないと決められません」
- ✓ 「必要ありません。二度と来ないでください」
- ✓ 「契約するつもりはありません」
- ✓ 「警察に通報します」(しつこい場合)
絶対にやってはいけないこと
- × ドアを開ける
- × 家に入れる
- × 個人情報を教える(名前、家族構成、銀行口座など)
- × その場で契約書にサインする
- × 「検討します」と曖昧な返事をする(また来ます)
多くの方が「断るのが申し訳ない」と感じるかもしれません。
でも、考えてみてください。
あなたは何も悪いことをしていません。
断られて当然のことを、彼らがやっているのです。
「断ること」は、あなたの権利です。
そして、あなたの財産を守るための、最も重要な行動なのです。
7. 被害に遭ってしまったら――すぐに取るべき行動
もし、詐欺や悪質な訪問販売の被害に遭ってしまったら――
すぐに以下の行動を取ってください。
1. 警察に通報する(110番または最寄りの警察署)
- • 被害の詳細を伝える
- • 犯人の特徴、連絡先、振込先などの情報を提供
- • 被害届を提出する
2. 銀行に連絡する(振込詐欺の場合)
- • 振込先の口座を凍結してもらう
- • 被害回復分配金制度の利用を相談
- • 一部でも返金される可能性がある
3. 消費者ホットライン(188番)に相談
- • 訪問販売や悪質商法の被害相談
- • クーリングオフの手続き支援
- • 専門家への紹介
4. 家族に相談する
- • 一人で抱え込まない
- • 恥ずかしいと思わないでください
- • 誰でも騙される可能性があります
クーリングオフについて
訪問販売で契約してしまった場合、8日以内であれば無条件で解約できます。
- • 契約書を受け取った日から8日以内
- • 書面で通知(内容証明郵便が確実)
- • 業者の承諾は不要
- • 違約金や手数料は一切不要
「騙された自分が恥ずかしい」
「家族に申し訳ない」
そう思う気持ちは、よくわかります。
でも、黙っていては、被害は回復できません。
そして、あなたが声を上げることで、次の被害を防ぐことができるのです。
勇気を出して、すぐに行動してください。
8. 家族ができること――高齢者を守る環境づくり
家族の皆さんに、お願いがあります。
あなたの大切な家族を、詐欺から守ってください。
1. 定期的な連絡
- • 週に数回、電話やビデオ通話をする
- • 「最近、変な電話や訪問はない?」と聞く
- • 孤立させない、相談しやすい関係を作る
2. 合言葉を決める
- • 「お金の話をする時は、必ずこの言葉を言う」という合言葉
- • 本人確認の方法を事前に決めておく
- • 例:「母さんの旧姓は?」「ペットの名前は?」
3. 防犯グッズの設置
- • 留守番電話機能を常に ON にする(詐欺電話は録音を嫌う)
- • 迷惑電話防止機能付き電話機
- • 「訪問販売お断り」ステッカーを玄関に貼る
- • 防犯カメラ・インターホンカメラの設置
4. 情報共有
- • 最近の詐欺手口を伝える
- • 地域の被害情報を共有する
- • 「こういう電話がきたら、すぐに連絡して」と伝える
5. 金銭管理のサポート
- • 大金を引き出す時は家族に連絡するルールを作る
- • 銀行のATM引き出し限度額を設定する
- • ネットバンキングのパスワード管理を手伝う
そして、最も大切なこと――
「もし騙されても、絶対に責めない」と約束してください。
被害者が最も恐れているのは、「家族に責められること」なのです。
だから、相談できずに、被害が拡大してしまう。
「騙されても、一緒に解決しよう」
そう伝えることが、最も効果的な予防策なのです。
9. まとめ――今日から始められる5つのこと
詐欺や訪問販売から身を守るために、今日から始められることを5つまとめます。
今日から始められる5つのこと
留守番電話機能を常にONにする: 詐欺電話の多くは、録音を嫌います。留守番電話で「録音されています」と流れるだけで、多くの詐欺師は電話を切ります。
「今すぐ」「今日中」と言われたら、必ず断る: 本当に急ぐ用事なら、公的機関は書面で通知します。電話で「今すぐ」と言われたら、99%詐欺です。
家族との合言葉を決める: 「お金の話をする時は、必ずこの言葉を言う」というルールを作りましょう。簡単で効果的です。
訪問販売は、絶対にドアを開けない: インターホン越しに「結構です」と断る。これだけで、ほとんどの被害を防げます。
「騙されても、家族に相談する」と決めておく: もし被害に遭っても、一人で抱え込まないでください。すぐに家族や警察に相談することで、被害を最小限にできます。
詐欺師は、あなたの「優しさ」「真面目さ」「孤独」を狙っています。
でも、その優しさを守るために、私たちは「断る勇気」を持たなければなりません。
「断ること」は、決して冷たいことではありません。
あなた自身と、あなたの大切な人を守るための、正しい選択なのです。
🆘 HelpCall - 緊急時、あなたを守る通話サービス
「助けて」と言えない時、HelpCallがあなたの声になります
もし、訪問販売で強引に契約を迫られて――
もし、詐欺師に電話で騙されそうになって――
もし、断りたいのに断れなくて――
「助けて」と言いたいのに、言えない瞬間があります。
目の前に犯人がいる時、電話で相手に監視されている時――
そんな時、あなたはどうしますか?
HelpCallは、あなたが「助けて」と言えない時に、
代わりにあなたの家族や信頼できる人に緊急連絡をするサービスです。
設定した時間に自動発信
「30分後に連絡がなければ、家族に通報」という設定ができます。訪問販売や詐欺電話の最中でも安心。
あなたの声を録音・送信
事前に録音した「助けてください」というメッセージを、緊急連絡先に自動送信。あなたの状況を正確に伝えます。
複数の家族に同時連絡
家族・親戚・友人など複数の連絡先に同時通報。あなたが一人で抱え込まないよう、すぐに助けを届けます。
高齢者の方が詐欺に遭いやすい理由――それは「断りにくい」「優しい」から。
でも、その優しさが狙われているなら、私たちが守らなければなりません。
HelpCallは、あなたが「断れない」時の最後の砦です。
犯罪者に狙われても、一人じゃない。
あなたの安全を、HelpCallが守ります。
※ 登録無料・月額料金なし・緊急時のみ300円(税込)